「吉」と「凶」の概念



結論から言いますと、絶対的な吉も絶対的な凶もあり得ない、
これらの吉凶は状況によって常に変化するものです。





とかく世間では、占いにおいて、吉と凶の白黒をはっきり付けたがるものです。
初心者にはその方がわかりやすい、という理由もあるでしょう。
例えば西洋占星術の座相なら、60度と120度は吉角、90度と180度は凶角、などです。


「人間万事塞翁が馬」という故事があります

このように、吉は凶の原因、凶は吉の原因となる、吉凶は常に流転する、という考えです。


よくある考えその1
安定を「吉」、大変動を「凶」とする考え方

ついそのように考えてしまう人もいるでしょうが、逆の場合も少なくないのです。
例えば、その人が奴隷的な境遇に居た場合、
そこに留まるのはかえって凶、その境遇を打破するのはかえって吉、となります。
紋切り型の発想と、今までにない斬新な発想。
平凡な家庭に育った子が親と同じ人生を歩むのと、親と違った道を歩んで成功するのと。など
大変動は、もちろん凶の場合もありますが、吉の場合も決して少なくありません。


よくある考えその2
その当時の社会規範に沿うものを「吉」、
そぐわないものを「凶」とする考え方

昔、良妻賢母になり夫を立てる(夫以上の才能パワーを持たない)事が
女性にとって唯一の幸福だと考えられた時代の中では、
独身のまま仕事で大成功する運勢を持った女の子は、凶運の子と言われたでしょう。
しかし、良妻賢母で夫を立てるが故に、夫の暴力から逃げられなかったり、
才覚を持たないが故に、夫がいなくなった後は生活に困ったり、というケースもあります。

身分の固定された社会では、親の職業を継ぐのは吉、継がないのは凶。
立身出世して官僚になるのは吉、それ以外は凶。など
占い師や占い本が、昔と今の時代背景の差を全く考慮せず、
大昔に書かれた教則本の吉凶観を鵜呑みにしてる場合も多いです。


他にも、占い師や占い本の著者が、
自分の価値観に合うものを吉、合わないものを凶、とする場合も多いです。


「吉」の中にも「凶」が、「凶」の中にも「吉」があります。

貧しい家から名門の富豪の家に嫁げば、衣食住の心配はなくなるものの、
しきたりや人間関係では、それまでにない苦労をします。
自分の部下を育てるために苦労するリーダーは、尊敬や信頼を集めますし、
部下のみならず結果として自分も成長します。
家族に病人が出たり収入が減った時、今までバラバラだった家族が一致団結し
かえって和やかな家庭になる事もあります。


「吉」と「凶」は、他人や社会通念や占い師や占い本の価値観ではなく、
その個々人の価値観によって決まるものです。
全く同じ環境で同じ道を選ぶのでも、人の性格や価値観によっては吉だったり凶だったりします。
占い師の仕事はむしろ、人それぞれに異なる吉凶を、
各々の価値観や状況に沿って見分けてあげる事でしょう。


本当に強い覚悟があるなら、自ら「凶」を選んでも良い

私の持論は、「凶が恐くては人間は務まらん」というものです。
部下のため地域社会のため消費者のため、自分を捨てて真剣に苦悩するリーダーの顔は時として
眉間にシワが寄る、頬がこける、目が落ちくぼむなどの「人相学的には凶相」を示すでしょう。
乗客をかばうために顔にやけどを負ったスチュワーデスもいる事でしょう。
災害の起こった地域やスラム街など、風水的にはむしろ凶と言える場所に寝泊まりして仕事をする
医師、公務員、ジャーナリストもいるでしょう。

反対に、一部の宗教的指導者の「これが出来なきゃオマエは功徳が積めない」などの
脅迫に屈して犯罪行為に走り、
凶を避けるどころか、他人を不幸にし自らが「凶の権化」と化した人もいるでしょう。
ただむやみに凶を避けたいと願う、その後ろ向きな気持ちが
かえって大きな凶を招く元になったという事例は沢山あるのです。

(2001-09-04) ※2001-09-20加筆



占いに入る前に
占いとの付き合い方
占いの種類
・「吉」と「凶」の概念
占い師のフィルターを通した解釈

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